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【日経2万円はバブル?】失われた20年、なぜ日本株は下げ続けたのか〜バブル期から大きく変わった日本市場〜

こんにちは。
日経平均株価20000円突破おめでとうございます^^

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(出典:株探より)
日経平均が20000円を突破するのは実に15年ぶり!昔から株をやっている人以外は、日経平均5桁目が「2」になるのを見るのは初めてという方も多いかと思います。
人間見慣れないものを見ると過度に警戒してしまうのが性で、今まで私達はずっと数千円から一万いくらまでの数字で「調教」されてきたので、「20000」という数字を見ると、「高い」と感じてしまうかもしれません。
日経平均20000円超えとともにたくさんの記事が書かれました。

 

15年ぶり!日経平均株価2万円到達は果たしてバブル? | ZUU online

www.nikkei.com

www.nikkei.com

様々なアナリストやエコノミストが今の水準がバブルかバブルでないか、今は買いなのか売りなのか論評していますが、そもそもバブルとはどういった状況を指すのか、誰が買っているのか明らかにせずに論じている気もしてなりません。

日本市場は本当にバブルなのでしょうか?
私は今回も、そして今後も日本株にバブルが来ることは無いと思っています。

理由はただひとつ。

 日本株を買っているのはもはや日本人ではない」

からです。

なぜ日本株はバブルでは無いのか説明する前に、まず実はバブル期からマーケットの買い手が変貌していることを理解する必要がありますので、順を追って説明します。
それが理解できれば、失われた20年と呼ばれるバブル期以降の期間、日本株は下げ続けたかもクリアに理解できるようになります。

 

簡単にまとめると以下のようになります。

バブル期のドメスティックなマーケットとは違い日本市場はグローバルなマーケットに変容した。今の買い手は外国人投資家。外国人投資家の基準で割高となれば即価格訂正が行われる。

②バブル時代は日経平均に対するPERが70倍を超える異常な状況であり、当時の日本企業にそんな稼ぐ力はなく、日本株の買い手が徐々に外国人投資家になっていく中で''世界水準''の価格に訂正されていった。→これが失われた20年の正体

日経平均20000円がバブルでない理由)

・日本企業の稼ぐ力(経常利益、EPS)がアベノミクス以降世界的景気回復と円安により飛躍的に高まり、リーマン・ショック以前の状況を超えていていること。

・異次元の金融緩和によりリスク資産への投資の許容度が上がっており、株式への資金流入が以前に比べると増えていること。(株高への期待の高まり)

 

 

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まず日本株日経平均)の長期チャートを見てみましょう。
みなさんよくご存知の通り、バブル期を頂点として、ずーっと低迷し続けるように見える日本株の悲惨な姿がそこにはあります。

f:id:nyanhiro:20150430081523j:plain なぜバブル期は利益水準とかけ離れてまで買われたのか、そしてなぜ日本株はバブル期の水準まで値を戻すことが出来ないのか。

それは日本株売買主体を考えることで見えてきます。考え方としてはとてもシンプルなものなので、逆に聞いてみたら肩透かしを食らうかもしれません。

 

日本の株式市場において最も変わったのは日本株を実際に買ったり売ったりしている主体です。当然ながら、市場において最も売買シェアの高い主体の売買動向が、実際のマーケットの株価形成に影響を与えます。ですので、影響力のある売買主体の思考を考えることで、実際にマーケットの株価が形成していくか予測することができます

ではさっそく売買主体の推移を見てみましょう。

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(出典:三菱UFJリサーチアンドコンサルティング

こうして見ると、バブル期までの日本市場がいかにドメスティックなマーケットであったことかお分かり頂けると思います。1989年の時点では本邦勢の売買シェアは80%を超えていました。バブルの時に株を買っていたのは日本人であり、日本の金融機関でありました。ですから日本株には日本人の期待が最も強く反映されます。当時、気にする株式の指標などなく、日本の経済は明るい、土地、株はまだ無限に上がる、と信じていた日本人でありましたから、日本株も無限に上がり続けたのでした。このバブルの崩壊は別に日本人が無限に上がるとは思わなくなったからではなく、政府の政策によって人為的に破壊されたものでしたので(ここらへんは書きたいことが山ほどありますが省略)、政府が何もしなければ日経平均4万円でも10万円でもあり得たと私は考えています。
(実は今まさにバブルの中国株も同じ構図なのです!)

 

さて、現在のマーケットの売買主体はどうなっているでしょうか。バブル崩壊以降、日本人による株の売買は大きく減り、特に日本人個人の売買はめっきり少なくなってしまいました。市場が回復してもなかなか日本人による売買は増えず、変わって売買を増やしていったのは外国人です。バブル期前は10%前後に過ぎなかった外国人による売買は年々シェアを伸ばし続け、現在では市場売買代金のうち、実に50%を優に超える水準のシェアを誇っています。ですから日本市場の流れを決めるのも外国人になるのも当然です。寄り付き前売買動向を気にする人が多いのも、外国人動向を見極めたいからですね。ですから現在の市場は外国人の思考で動かされているということを常に頭に入れておくことが大事です。
彼らが高いと思う水準であれば売られますし、安いと思う水準になれば買われるわけです。

以上のように、現在の日本株は外国人によって買われていること、市場は外国人投資家によって支配されている、ということを頭に入れておく必要があります。

 

では、彼らが割高、割安と感じる水準とはいったい何なのでしょうか。
それは、日本企業の稼ぐ力(EPS)とそれに対する期待の高さ(PER)によって判断します。

EPSとは、一株あたりの純利益のことです。日経平均株価にもEPSがあり、日経平均株価に採用されている225銘柄の各社EPSに特殊な数字をかけて算出されています。
そしてもうひとつ、PERという指標があります。PERは株価の割安さを測る指標であり、一株あたりの利益(EPS)に対して、株価がどれくらい高くプライシングされているかを示すものです。私はPERは「その企業の業績の先行きに対する期待の高さ」だと捉えています。過去に比べて、PERの数値が高くなれば企業の業績に対する先高期待が強まっているといえるでしょう。

 

ではさっそく日経平均PERの推移を見てみましょう。

バブル期にはなんと70倍ちかくあったものが、現在では10数倍程度。昔に比べると驚きの健全さです。バブル後の底値でさえPERが30倍を超えており、今から考えればちっとも割安ではありません。むしろ割高です。

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(出典:日本経済新聞

 

ここまで来ればカンのいい人たちはなぜ日本株は下げ続けたのかわかったかもしれません。
ここまで健全な日本市場になったのは、私は先ほど挙げた日本市場におけるプレーヤーが変わったからだと思っています。日本市場におけるプレーヤーは日本人から外国人に変わり、彼らの信じる指標、水準が持ち込まれ、彼らが納得する水準まで訂正されたのです。外国人投資家は別に日本市場だけではなく、様々な海外市場を見て各国株式の割安さを判断しますから、世界基準で見て割高であれば水準訂正が行われます。上の図を見てわかるように、欧米の株式におけるPER水準は平均すると15倍程度に収まります。この水準が彼ら外国人投資家の考える基準なわけです。アメリカやドイツに比べると最近までの日本株は業績に対してあまりに割高な水準である一方で、日本がアメリカやドイツに比べて高い成長率があるわけもない(むしろ低い)ですから、割高な状況が許容されるわけがありません。当時の日本企業の稼ぐ力は今に比べるとずっと低かったわけで、その日本企業に高い評価を与えていた市場は今では理解できませんね。当時このような株価が正当化されたのも、買い手が上に挙げたような基準を持たない日本人だったからです。そして買い手が日本人から外国人に変わっていく中で徐々に日本株の割高さも訂正され、現在ではグローバルなマーケットとほぼ変わらない水準の範囲内までようやく訂正されたわけです。私はこれが失われた20年で株価が下げ続けた理由だと思っています。

 

 

【最後に:日経平均20000円は本当にバブルなのか?】

さて、最後に現在の日本市場は本当にバブルなのか検証してみましょう。
まずはじめに現在の日経平均EPSとPERを見てみます。

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(出典:NIKKEI225JP)

現在の日経平均20000円を前にして日経平均EPSは約1100円、PERは約18倍となっています。

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(出典:NIKKEI225JP)

長らく日経平均PERは14倍〜16倍の水準でうろうろしていましたが、ついにこの水準をブレイク。現在ではなんと18倍まで到達しています。近年では2013年の5.23ショック以降無かった水準です。

 

アベノミクス以降、日本企業の稼ぐ力は伸び続け、現在ではリーマン・ショック前の水準を超えるところまで来ています。そしてこれからの円安期待は強く、日銀の異次元緩和によりマーケットには今までに無いほど資金が供給されているため、リーマン・ショック前の水準よりPER(期待)が高まっても許容できる範囲だと思います。現在の日経平均EPSは約1100円、日経平均PERは約18倍ですので、ぎりぎり適切な範囲といえるでしょう(敢えてバブルと言いたいならプチプチバブルくらい)日経平均が2万円を越えようとも、決してバブルではなく、むしろあまりに過小評価されていた日本企業が再評価されたというポジティブな結果だと捉えていいと思います。

 

但し、いくら日本企業の稼ぐ力が高まっていようとも、期待が高まりすぎると暴落によって水準は訂されます。
現在の世界の株価水準を見てみましょう。データの出処が違うので数値に少しブレが見られますが、相対的な割高さ割安さは変わらないはずです。

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(出典:わたしのインデックス)

グローバルな目線で見た時、現在の日本株の水準はかなり割高なところまで接近しており、水準訂正があってもおかしくない状況です。ありそうな下落きっかけとしては2つ考えられます。

 

日本企業の予想利益がアナリストの予想に達しないことがはっきりした時
現在アナリストたちは日経平均EPSは20%程度増益の1350円まで行くと予想しているようです。単純に考えて各社20%以上増益予想を出すというのは可能なのでしょうか。もし、この水準をクリア出来たら、利益水準訂正と日本株に対する更なる期待の上昇により、まさに日経平均2万は通過点となることでしょう(^^)
これから本格的に決算発表が始まりますが、大事なのは前期いくら利益を出したかではなく、今期いくら利益を出せるかです。(今のところ、企業の予想利益はかなり保守的なようです・・・)

4月30日に日銀が追加緩和をしなかった場合

金融や証券株の動きを見る限り、マーケットはかなりの確率で日銀が追加緩和をする方向にベットしているようです。もし日銀が追加緩和をしなかった場合、期待が剥落し日本株下落のきっかけになるかもしれません。マーケットは下げる理由を探しているはずです。

 

 

日経平均もこうした見方をすれば本当にバブルなのかバブルでないか判断することが出来ます。決して値ごろ感からバブルだ、なんて言うのはやめましょうね。
では今日も、Happy Investing! :)