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なんひろの需給図鑑

あなたの理解できないその動き、ちゃんと'ワケ'があります!

福井の雄、江守商事の悲劇〜'絶好調'から倒産へ〜 ①開示から見る倒産編

こんにちは。

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メイちゃんが来るのか、来ないのかでもはやオオカミ少年化している日本市場ですが皆様いかがお過ごしでしょうか。
日本市場は正念場ですが、今まで世界の中でも調子が良かった市場が崩れているのが気になります。(画像は5月7日時点)

ドイツ30種(DAX)

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インド30種(SENSEX)

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(どちらも出典はInvesting.com)

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(出典:株探)

日本市場には頑張って欲しいですね^^ 


さて本題。
今回取り上げるのは江守ホールディングス(9963)です。この会社、先月末に民事再生を発表、5月いっぱいで上場廃止になることが決まりました。普通であればお疲れ様でした、で終えるところですが、この会社の倒産は他の倒産とはちょっと違います。
東証一部上場企業である点
②直近売上高億円以上(つまり、絶好調)である点
③貸借銘柄(空売りが出来る)である点

すなわち、世間的に見れば圧倒的な優良企業の倒産(実質的に粉飾をしていました)という点で珍しいケースだと言えましょう。
この会社、四季報で実は大絶賛されていた企業の一つです。

 



そして実は株式市場では③の特徴のために非常に盛り上がった企業でありました。(「空売りしていた銘柄が倒産する」、という思惑、そしてもう一つ...(後述))

以上のように、江守HDの倒産からは非常に示唆深いものを感じます。なぜ優良企業が突然倒産するのか、なぜ優良企業が粉飾をする必要があっったのか、粉飾を事前に予測することは出来なかったのか...

今回は3本建て。みっつに分けてそれぞれ説明していきたいと思います。

 

①開示から見る倒産編 
手に汗握る悲劇の物語。江守商事に何が起こったのか、適時開示情報から倒産までの流れを追います。

 

②株価編 
倒産しそうなら空売りすればいいじゃないか、と思ったアナタは単純。株式市場では江守の倒産に懸けるもの、懸けないもので悲喜こもごもの動きがありました。そして尋常ではない額の空売りのペナルティが発生し、株式市場は更に盛り上がりました。ほころびが出始めてからの株価の記録です。

 

③粉飾編 
会社側は否定していますが、実質的に江守は粉飾を行っていました。そして膨張しすぎた図体に耐え切れなくなり、多額の貸し倒れ引当金を計上して倒産しました。しかしながら、過去の開示情報から江守の不自然さを見抜いていた人たちもいました。そこで、いかにすればこのような倒産から免れるのか、江守のファンダメンタルズ的な分析を交えながら解説したいと思います。

 

今回は開示から見る倒産編。まずは江守HDに何が起こったのか、適時開示から見て行きましょう。

 

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悲劇の始まりは2014年10月20日の開示からでした。

①悲劇の始まり

『業績予想の修正、貸倒引当金繰入額の計上及び配当予想の修正に関するお知らせ』

http://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS70163/6e55abff/893a/4717/9c4d/30c6e0dc966e/140120141003053407.pdf

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修正の理由

当社の主力市場である中国においては、不動産開発投資と製造業の設備投資が調整局面を迎え ており、景気の先行きに不透明感が強まるなか、金融機関がリスク回避の必要性から融資を引き 締めております。かかる状況下、以下のとおり業績を見直しました。

(平成 27 年3月期第2四半期(累計)連結業績予想数値の修正)

中国子会社の一部得意先の資金繰り悪化により、売上債権の回収に疑義が生じたため、本日の 取締役会において、個別の貸倒引当金を計上することを決議いたしました。また、中国経済成長 の減速から総じて信用リスクが高まっている状況を考慮し、債務者区分の細分化及び引当率の見 直しを行い、これにより一般貸倒引当金についても追加計上することを決議いたしました。この 結果、第2四半期連結累計期間において、個別・一般合計で貸倒引当金繰入額 857 百万円を計上 いたします。 営業外損益では、人民元安の影響を受け、主に中国子会社のドル建借入金の評価替えから為替 差損が発生したほか、金融費用についても増加いたしました。

(平成 27 年3月期通期連結業績予想数値の修正)

通期連結業績予想についても中国経済動向を勘案し、中国子会社の今後の販売計画を見直すと ともに、直近までの業績動向も加味した結果、上記のとおり修正いたしました。

 ここで江守HDの業績の伸びをほぼ担ってきた中国事業に暗雲が立ち込めてきたので貸し倒れ引当金を積みましたとの開示。
今までものすごい成長で成長してきた(はず)の企業ですから、突然の急減速に驚いた人は多いでしょう。
江守HDはもはや2014年時点で中国事業におんぶ抱っこ状態ですから、ここがこけると大変なことになるということでここで江守に対して信用不安が高まり始めます。

注目すべきは開示の内容です。得意先が資金繰り悪化してる時点でオカシイ(普通であれば怪しい点があれば取引を徐々に縮小し、早めの貸し倒れ引当金を積み始めるはず...)ですが、その他の取引先にも懸念がありますよと言っているところに不安を感じました。しかしながらよく考えましょう。得意先が資金繰り悪化で貸し倒れ引当金は僅かに8億ちょっとです。売掛金の合計は億円ですから、それから考えると少なすぎる金額です。

 

ここで一回目の暴落が起こります。

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②中国事業の立役者が突然の左遷(2014年11月17日)

http://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS70163/c5aec18e/68a6/468c/a894/57fadc4d9662/140120141117082097.pdf

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上の人事異動表を御覧ください。
目につくのが『謝飛紅』という人の降格です。
この人、まず、出世のスピードが尋常ではありません。調べてみると中国江守の副経理になってから年で江守の本社取締役まで出世しています。
そして一緒に江守グループの売り上げの伸びを見ていましょう。この人が就任してから急激に伸びています。ここから考えるに、この『謝飛紅』という人物が江守伸長の立役者と言うことが出来るでしょう。そういった人物が数億円の損失で突如としてマーケティング担当に降格となるのはただごとではありません。

 

そして大きな不安を抱えたまま年が明けます....

 

 

③ついに崩壊が露わに(2015年2月6日)

http://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS70163/453d9d57/17f8/43ca/bc92/85d09bcb3480/140120150206021197.pdf

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そして年が明け、ついに動き始めます。
2015年2月6日、貸し倒れ引当金を更に積み増すことが発表されます。その額約6億5千万円。先の発表とそう変わらない額です。そして注目すべきは売掛金にかけていたはずの保険金を受け取れなくなった、というものです。

これらの得意先に対する売掛金については、取引信用保険を付保していたため、第2四半期 の決算において売上債権金額から保険金回収見込額を控除の上、貸倒引当金を計上しておりま した。 これまで当社は、申請中の保険に関して保険会社と協議を続けて参りましたが、この度、保 険会社との協議がまとまり、対象保険の一部の支払いを受けられなくなりました。その理由は、 中国子会社が保険契約上の義務(通知義務、損害発生防止義務等)を怠ったというものです。

その理由が「中国子会社が保険契約上の義務(通知義務、損害発生防止義務等)を怠ったというものです。」というものですから、"取引先の資金繰りが悪化していることを知りながら"、保険の契約を結び、保険金をかすめ取ろうとしていた可能性すらあります。

 

④決算遅延(2015年2月6日)

http://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS70163/cc11f0af/2e5a/4862/934b/c05557f9d284/140120150206021192.pdf

そして同日、決算の遅延が発表されます。決算の遅延は通常の上場企業であればありえないこと。何らかの重大な問題が発生しない限り、決算の遅延を決断することはありません。これで今までの開示がただの特別損失と思っていた人たちもようやくことの重大さに気付き始めます。

当社は、2月9日の決算発表及びその後の四半期報告書の提出に向けて準備を進めてまい りました。しかしながら、中国経済の急激な減速を受けて中国連結子会社における売掛金の 回収可能性に疑義が生じており、大口得意先に対する貸倒引当金についてはこの第3四半期 において積み増しを検討せざるを得ない状況になっていることから、決算作業に遅れが生じ ております。具体的には、貸倒引当金の見積りに際して直近の得意先の財政状態や売掛金の 入金状況、担保設定の状況や取引信用保険の付保状況を慎重に精査したうえで、数値確定の 作業を進めており、その見積りに多くの時間を要しております。また、当社の監査法人から も、この貸倒引当金の監査に際しては、通常の四半期レビューにおける手続きと比べて追加 的な監査手続きが必要であり、監査終了には時間を要する旨の連絡を受けております。

とあり、おそらく監査法人から中国事業の取引先の信用状況をすべて再調査せよとの仰せがあったのと予想します。こういったところにただごとではなさを感じます。日頃からきちんと信用状況を確認しておけばこういった必要は無いわけで、普段の取引の杜撰さを感じます。おそらく、売上至上主義で相手の信用は度外視だったのでしょうね。(バブル期みたいだ...)

 

ここで2回めの暴落が起こります。

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⑤突然の財務担当役員の辞任(2015年2月9日)

http://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS70163/62bcc1f1/1f65/4d9d/9ec1/f7142145481a/140120150209022364.pdf

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私はここで非常にきな臭いものを感じたのですが、江守HDの決算を担当してきた財務統括役員が"一身上の都合により"退職したと発表します。決算が遅延し、貸し倒れ引当金の再試算を行わなければならない重大局面に、財務統括役員が辞任するなんて責任感もなにもありません。辞めるにせよ、この忙しい時期に一区切りつけてから辞めてもいいはずです。
このタイミングで辞めるならば(実際にそうでなかったとしても)何かやましいことがあって逃亡したとしか考えられません。
ますます江守の決算に対する疑念が高まっていくます。

 

 

⑥更なる中国調査へ(2/14)

http://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS70163/d81b173c/1d0d/4e69/8e14/d2b24d463797/140120150210023612.pdf

 

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だんだんと小出しでヤバそうな開示を出してきますが、ついに取引先が実質的な破綻だったとお笑い開示。そしてやはり情報の非提供や違法取引(おそらく循環取引のこと)があったとのこと。今まで燦然と輝いていた中国事業がどうやら真っ黒だったっぽいということで疑念がだんだんと確信に変わってゆきます。

 

 

そして前後して新卒採用の中止が...

 

 

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⑦調査結果の中間報告(3/2)

http://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS70163/edcd336b/f3f7/4b99/97a4/cae47d08fac3/140120150302402003.pdf

取引の妥当性に関する調査については、上記弁護士事務所より、2月末を目処に進めてきた、 関係者の聞き取りをはじめとする中国現地における調査が一通り完了し、現在、聞き取り結果の 精査・検討及び電話による追加の聞き取り調査等を行っているとの報告を受けております。なお、 現時点では懸念していた重大な事実は検出されておりません。 売上の実在性に関する調査については、監査法人による監査の一環として現在も進行中であり、 今後、貸倒引当金の計上額等の監査結果と併せて調査結果の報告を受ける予定です。 重大な内部規則違反に関する調査については、決算の修正や注記の追加の原因となって監査法 人の監査に影響を及ぼしうる事項から先行して、中国現地における調査・資料収集を行っており ますが、現時点では懸念していた重大な事実は検出されておりません。なお、当該事項以外につ いては今後も引き続き、コンプライアンス関連の社内活動において必要な対応を行ってまいりま す。

中間報告によれば、売上の実在性については疑念の含みを残しつつも、その他の項目に関しては新たな問題は出てこなさそうな表現であり、全体を通して読めば、ポジティブな内容のIRとして捉えることが出来ます。

中間報告によって安心したり、空売りを買い戻してしまった人もいるでしょう。これで一段水準が上がり、売り方は更に厳しい勝負を強いられます。3月16日の提出期限ギリギリまで決算は出さないことを最後の文章でリリースしていますから、売り方はそれまでにどうするか決めなければなりませんでした。

 

実際、市場はこの結果をポジティブに受け取り、株価は暴騰。

一段上の水準で結果を待つことになりました。

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そして運命の3月16日...

 

 

 

 

⑧疑義注記転落(3/16)

http://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS70163/d4015c24/773a/4ee1/8adb/11ee26fc731c/140120150316413092.pdf

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⑨業績修正(3/16)

http://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS70163/ac9d59e6/05f8/4027/ba15/eabe43e18ae3/140120150313412460.pdf

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⑩粉飾発覚(3/16)

http://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS70163/cc4df485/e9e8/4b58/9950/4adda168cf64/140120150316413709.pdf

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www.fukuishimbun.co.jp

貸し倒れ引当金をなんと約480億円引き当てることを発表!
今まで大事に貯めこんできた利益剰余金をすべて吐き出してもなお余りある赤字のために、債務超過に一発転落してしまいました。

何が起こったのか簡単にまとめると、

①中国で不正な売上を計上し、売上の水増しを行っていた
②中国での取引のうち、その7割が回収できない可能性発生
③その結果、多額の貸し倒れ引当金を積まなければならなくなり、特別損失に計上
債務超過

 という流れになります。

 

この債務超過という状態は非常にまずく、通常であれば決算またいで1年で上場廃止となります。債務超過額が240億なのでこの状態を1年で解消する必要があり、現実的に現在のキャッシュ・フローで返済することは不可能なので、対応策は①借金を減らす②代わりに払ってくれる人を探す③踏み倒すしかありません。
①の方法としてはデット・エクイティ・スワップ(DES)という方法があります。これは負債を株式に転換して、負債を減らし、純資産を増やすという魔法のような方法があり、多額の債務を抱えた企業がよくやる手法です。
ですが勿論デメリットが有り、株式の発行枚数が大幅に増加しますから、EPSが希薄化され株価の暴落を招きます。
②としては企業再生ファンドなどから資金を注入してもらい、時間をかけて負債を返済していく方法。こちらも同時に株式の希薄化を招くことが多いですが。。。
私は会社の記者会見で民事再生をしないと言っていたので、DESの発行によって乗り切るものだと思っていました。

 

 

これにより4連続ストップ安を演出。3度めの暴落です。900円近くあったものが300円前半台まで落ち、売り方大勝利!のように見えました。
が、この後謎のストップ高3連発により、株価は500円台に再び定着。売り方は再び安心できない水準で買い戻すか、買い戻さないかの判断を迫られることとなります。

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⑪中国から撤退決定(4/16)

http://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS70163/9f7a4ffe/e4ab/4828/9d56/e21524842d76/140120150416441532.pdf

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そしてついに中国事業からの撤退を発表。江守は中国事業が8割を占めているのに撤退したら何が残るというのでしょうか。。。そしてリストラ費用など事業縮小費用などによってまた特別損失発生とのこと.... しかしその額はまだ確定せず、計算できません!!!みたいな感じで、だんだんと投げやりになってきている様が見れます。

 

 

 

⑫そして破産へ(4/30)

http://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS70163/9239f0be/b4a9/40af/8ba0/4df599b1f7f6/140120150501460124.pdf

 

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www.nikkei.com

ついに最後には白旗を上げることになりました。
企業規模に対しあまりに債務が大きすぎたのでしょう。民事再生による更生手続きを受けることになります。これにより、上場廃止が決定され、本文中にもあるように資産をすべて売却しても株主に残る資産も無いということで、株券の価値が名実(期待?)ともにゼロとなります。
さて、ここで面白いのが支援企業です。まずは株式会社興和ですが、これは名古屋の未上場ながらも優良企業として一部の人たちの間では有名で、結構CMを打っているので興和と聞いてもピンと来ないが、キューピーコーワと聞けばわかる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

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また、業績不振に陥っていた株式会社白元からホッカイロ事業を譲り受けたり、これまた業績不振の丸栄に出資したりと、企業再生屋として有名な企業です。(現在では民事再生後に白元本体はアース製薬に譲渡)

また、株式会社ジェイ・ウィル・パートナーズ は日本人による企業再生ファンドとして有名であり、地銀の合併案件など地方企業の再生をたくさんこなしており、地銀の駆け込み寺ともして知られています。
(ところで探していたらこんな記事を見つけました...w)

地域経済は国内資金で再生 大きなうねりで活躍するファンド(後)~(株)ジェイ・ウィル・パートナーズ:|NetIB-NEWS|ネットアイビーニュース

全国各地の地銀と協力して地場企業の再建をした事例は枚挙にいとまがないが、ごく最近では今年2月15日、「福井県ふるさと企業再生ファンド」を設立し福井県内の中小企業の再建に乗り出した

江守商事の再建は、福井銀行のこういうつながりから決められたのかもしれませんね。

 

いかがでしたでしょうか?江守HDの様子がだんだんとおかしくなっていくさまがご理解できたでしょうか?

現在の江守の価格は5月8日の時点で52円もの価格がついています。1ヶ月満たない先にはゼロ円になる株式が52円も付いているのはマネーゲーム期待でしかありません。
スカイマークも同条件でも20円程度であったのに、なぜこんなに差がつくのでしょうか。
その理由は、江守の株式上の特徴にあると考えています。
それは次回、江守の株価の動きも見ながらじっくり説明していきたいと思います。

 

では今日も、Happy Investing! :)